快適な電子観望には正確な自動導入が不可欠です。夏の夜空には美しい天の川とメジャーな星雲と星団があります。ceres-cを焦点距離650ミリの望遠鏡に接続したとき市販の代表的な自動導入経緯台の導入精度を検証します。参考にしてください。
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低性能自動導入経緯台での電子観望【Azgte経緯台】
自動導入経緯台とは謳っていますが現実はなかなか厳しいものがあります。
思い通りに導入できないということです。
それでも、これがないと電子観望ができないので癖を掴んで乗り切りましょう。
導入に時間をかけてはいられません。馴れると簡単に対象天体を導入できるようになります。
リーチイッパツで導入できることは少ないですが間違いなく近辺には向いています。うまく使えば頼もしい架台です。コスパ、タイパは素晴らしい!
使用機材・スカイウォッチャーAzgte自動導入自動追尾機能付き経緯台
使用する望遠鏡は、すでに廃盤のニュートン式反射望遠鏡AzgteP130n。
ファインダーは光学式5センチ9倍に変更しています。鏡筒と架台に改造はありません。CMOSカメラにレデューサーはつけていません。
標準仕様で自動導入した精度を紹介します。観測地点は住宅街にある自宅の南向きのベランダです。
ほぼ、買ってきた望遠鏡そのままです。
CMOSカメラ | PlayerOne製 | ceres-c | 1/3インチ | 解像度1304×976 |
望遠鏡 | SkyWatcher製 | AzgteP130n | 口径13センチ | 焦点距離650ミリ |
夏の代表的なDSO(銀河、星雲、星団)で導入精度を検証
夏を代表する4つの散光星雲で検証します。どれも電子観望で満足度の高いとても魅力的な天体です。
この4個の散光星雲はいて座にあり、かなりまとまっています。さらに見かけの大きさもあり光度もそれなりです。
比較的導入しやすい天体になると思います。すべて高度が低い天体なのでベランダから電子観望します。
ベランダからだと庇や隣家の屋根の影響をまともに受けます。アライメント星の選択には、かなり影響を受ける劣悪な環境です。
けっきょくベランダではアライメントの候補の中で選択できるものが1種類だけになってしまいました!
アライメント星の選択【選択できる余裕はありませんでした】
SynScanProのブライトスターアライメントを使います。
SynScanは望遠鏡を動かすスマホアプリのことです。
できるだけ正確な水平出しをしてからアライメントに入ります。
アライメント星アンタレスからNUNKI
ひとつ目のアライメント星はアンタレスしか使えません。それ以外の候補はすべて屋根や庇が邪魔で導入ができません。
ふたつ目のアライメント星も2等星の候補はかなりありますが、どれも導入できる位置にありません。
唯一、いて座にある2等星のNUNKIだけが可能でしたので決定しました。
いて座にある散光星雲を狙うのであればアンタレスと挟み込む形になり悪い位置ではありません。
星座 | DSO種類 | 等級 |
いて座 | M8散光星雲【干潟星雲】 | 6.0 |
いて座 | M20散光星雲【三裂星雲】 | 8.5 |
いて座 | M17散光星雲【オメガ星雲】 | 6.0 |
へび座 | M16散光星雲【わし星雲】 | 6.0 |
アライメントは自動導入経緯台では必ず必要な作業です。望遠鏡に自分のいる位置を認識させる作業のことです。
正確な水平出しはアライメントの基本
望遠鏡はできるだけ正確に水平を出して設置します。
手動で観測するときも水平に設置するようにしましょう。
アライメント星の選択と導入する天体には微妙な関係があります。導入する天体にできるだけ近い星をふたつ目のアライメント星にしましょう。動く距離が少ないほど精度は高くなります。
CMOSカメラの設定【露出0.5秒・ゲイン471】
露出時間はライブスタック前はいつも0.5秒で設定しています。
1.0秒にしたほうが暗い光を捉えることができますが、望遠鏡を動かしたときの画面の追随が遅くなります。
ゲインは500を目途にして画面が粗すぎずできるだけ弱い光が見えるように調整するようにしています。
ゲインを上げ過ぎると画面がノイズだらけで見にくくなることもあります。
当日の観測する位置によってもかなり変わってきます。
基本として400~500でスタートして無理のない範囲でゲインは上げていくようにしています。
いて座M8散光星雲【干潟星雲】
画像の左枠に写っているのがceres-cの画像です。まわりはSharpCapのコントロールパネルです。
天体画面の右下にぼんやりと写っているのがM8干潟星雲です。
アライメントしたNUNKIからM8に向かって最初に導入した天体になります。
おおきな距離を動いたわけではありませんがセンターから右下にずれています。
この程度のズレは悪くありません。だいたいこんな程度の精度です。
画面にさえ入っていれば微動で動かして中央に持っていきます。
M8干潟星雲は散光星雲のなかでは見た目も大きく明るい方ですが、ライブスタック前ではこの程度の見え方です。
これでもM8干潟星雲は比較的見つけやすい方です。
実際の見た目の印象はこの画像よりも、もう少しわかりやすいです。一瞥でわかります。
いて座M20散光星雲【三裂星雲】
M8干潟星雲のつぎにM20三裂星雲に向かいます。すぐそばで移動距離もわずかです。
画面の下の真ん中で少しだけ明るくなっている部分がM20三裂星雲で上の部分が引っかかています。
M8干潟星雲よりも見づらいのですが実際の識別はそれほど難しくなかったです。
ズレ方が少し左に寄った感じです。
M20三裂星雲を真ん中に持ち上げてあります。
見づらいですが星雲部分が黒い影で三つに分けられています。
この程度の見え方なのでライブスタックをかける前の画質は慎重に合わせる必要があります。
背景が明るすぎると見えづらくなることもあります。
また、背景が暗すぎると星雲が出てきません。
ヒストグラムを使ってできるだけ見つけやすい画質にしないと見逃しかねません。
いて座M17散光星雲【オメガ星雲】
引き続きM17オメガ星雲に向かいました。少し離れています。
やはり画面の下がわに引っかかっています。
M8干潟星雲につぐ明るさがあります。実際の画面でもよくわかります。
中央に持ってきた画像です。今日の導入精度はすべて画面の下半分にズレています。
導入のズレはこのように一定の傾向が表れることが多いようです。
アライメント星のアンタレスとNUNKIにはさまれているうえ、導入した天体の位置がかなりまとまった位置にあるせいでしょう。
アライメント星を大きく外れて動かすと、この限りではありません。
導入に苦労している時は目標天体の近くにある星を使うようにして、あらためてアライメントしたほうが効率は良くなります。
へび座M16散光星雲【わし星雲】
M17わし星雲は導入できていませんでした。この画像は画面の下のほうにあるだろうと見当をつけて掃天して見つけました。
ずれた距離は画面の半分くらいだと思います。
ある程度、ズレのパターンが判っていたので苦労することなく導入出来ました。
M17わし星雲ですが画像のとおりほとんど存在がわかりません。
実際の画面でもかなり判りづらい星雲です。
M16わし星雲をライブスタック
ゲイン470、露出時間4秒でライブスタックしました。スタック枚数は64枚です。
0.5秒では見えなかった星雲や星もでています。
さらに1枚画像よりもノイズが減って滑らかな画面になっています。
右上の白い部分はアンプグローノイズというセンサーの発熱に伴うノイズです。
ceres-cはこれが気になります。
uranus-cはうまく処理されており、ほとんど気にならないレベルまで消去されています。
7月27日惑星状星雲の導入検証
夜になっても猛烈な暑さでしたが久しぶりに星が出ていたので導入の検証をしました。
こんかいはこと座のM57リング星雲とこぎつね座M27亜鈴状星雲がターゲットです。
どちらもベランダからでは見えません。庭から電子観望します。
ブライトスターアライメントで導入します
基準星は1個目をわし座の1等星アルタイルにして2個目に白鳥座のSADR2等星を選択しました。
目標としたのはこと座のM57リング星雲なのでベストの位置とは言えません。
結果的に導入できていませんでした。画面の下に1画面近くズレていました。
こちらの画像は手動で探し出したM57のライブスタック前の画像です。
小さいですが、けっこうわかりやすい星雲です。
露出4秒ゲイン480くらいで70枚くらいスタックした画像です。
惑星状星雲はカラフルですね。たばこの煙みたいです。
引き続きM27亜鈴状星雲に向かいました
驚いたことに画面の左下に入っていました。
かなり薄くわかりづらいのですが実際にはすぐに画面上で認識できました。
こちらは露出4秒ゲイン550くらいスタック枚数84枚です。
天頂のあたりは街灯の影響を受けにくいと思いゲインは上げてみました。
緑と赤が美しいですね。亜鈴の形になっています。
夏の星雲で導入の検証に取り組んでみましたがやはり正確度は低いようです。望遠鏡の個体差もあるのでしょうがこの程度なのでしょう。それでも手動で導入することにくらべたら、かなり楽ではないでしょうか。
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