はじめて購入する望遠鏡としての使いやすさ・光学性能・コストの3つの要素を検討してたどり着きました。簡単に使えて、高い光学性能と、手が出やすい価格でまとめられています。購入後の保管とメンテナンスに関しても負担は少ない望遠鏡です。
大人が使う【眼視観測用】望遠鏡の2強徹底比較!

- 土星の環を自分の目でしっかり見たい
- 取り扱いや保管に気を使いたくない
- 長く一生の相棒にしたい
どうせ買うならずっと使える望遠鏡がいいと考えている方におススメしたい2機種です。優れた光学性能と扱いやすさにコストも考えた本格望遠鏡です。
土星の環や月のクレーター、木星の縞、火星の表面など観測対象は無数。天体写真や電子観望ではなく自分の目で天体を見るための究極の望遠鏡です。
●天体写真や電子観望にはアクロマート屈折は厳しいものがあります。あくまで眼視観測の望遠鏡です。ふたつの望遠鏡のいちばん大きな問題点は図体です。とにかく邪魔になります。
ビクセン ポルタⅡ-AE81M 【累計15万台の実績!】
【参考価格 59000円税込み】 眼視観測向きで初心者にも扱いやすい望遠鏡です。ポルタ経緯台の利用価値は高い!
土星の環や木星の縞模様、視界いっぱいに広がる月面のクレーターを楽しめます。日常では見えることのない世界をご自分で体験してください。
| アクロマート式屈折望遠鏡 | レンズは標準的な色収差対策 |
| 口径80ミリ | 高倍率の惑星観測向き |
| 焦点距離910ミリ(F11.4) | 長焦点で無理なく高倍率が出ます |
| 上下・水平微動装置付き経緯台【ポルタⅡ】 | ポルタⅡは実績抜群の架台です |
| ポルタⅡの最大搭載可能重量 | 5.0キロ【頑丈だけど重たい】 |
| アリガタアリミゾ接続 | 同じ形式の鏡筒は交換できます |
| 倍率46×・144× | 中倍率の購入をおススメします |
| 光学ファインダー | 6×30ミリ光学ファインダー |
| 正立天頂プリズム付き | 高ポイント! |
| 伸縮式三脚 | 90~130センチ |
| 重量キロ | 9.0キロ |

もっとも知名度の高い国産望遠鏡メーカーが出している大ヒット商品です。
初心者向けの代表的製品でしょう。小学校の備品とかで採用されてます。間違いなく日本のスタンダードといえる望遠鏡です。
電子観望には使えませんが眼視による月、木星、土星であれば充分です。
特に架台のポルタⅡは、これだけで購入する価値のある製品です。
しっかりした剛性とフリーストップの操作性。さらにアリガタ構造で互換性を確保しています。いろんな望遠鏡を載せ変えて楽しめます。
欠点は微動ハンドルが短いことでしょう。腕を伸ばしての操作になります。しかしこの架台と三脚はみるからに頼もしい造りになっています。ただし重たい。
●微動ハンドルはフレキシブルハンドルに変えたほうがいいですよ!
スコープテック アトラス80 眼視観測の望遠鏡として最終到達点!
【参考価格 66800円税込み】 眼視観測向きで初心者にも扱いやすい望遠鏡です。
光学性能、架台の剛性、重量どれを見てもポルタⅡを超えます。ただし鏡筒の載せ替えなどの発展性はありません。完成された望遠鏡です。
| アクロマート式屈折望遠鏡 | レンズは標準的な色収差対策 |
| 口径80ミリ | 高倍率の惑星観測向き |
| 焦点距離1000ミリ(F12.5) | 長焦点で無理なく高倍率が出ます |
| 上下・水平微動装置付き経緯台 | 優秀ですがアトラス鏡筒専用の架台です |
| 倍率40×・111×・167× | 追加購入は不要かな・・ |
| のぞき穴式ファインダー | 光学ファインダーはオプション |
| 天頂ミラー付き | 普通 |
| 伸縮式三脚 | 80~127センチ【地面から垂直軸までの高さ】 |
| 重量キロ | 6.7キロ |

ポルタⅡに対抗できます。アクロマートではいちばんよく見えると評判の望遠鏡です。
トップマウントの架台もしっかりしています。観測で悩まされるブレを最小限に抑える構造になっています。
重量を抑えて完成度ではポルタⅡを超えています。
ただし専用架台のため発展性は犠牲になります。鏡筒の載せ替えはできません。
ファインダーは別売りですが月や惑星の観測では特になくても大丈夫です。重量がポルタⅡよりも2.3キロ軽いのは稼働率を上げる重要なポイントです。
高倍率と低倍率の設定がうまく出来てます。焦点距離がポルタⅡより長い分、見え味は有利ではあります。
●三脚がポルタにくらべてひ弱そうですが決して弱くはないですよ!
屈折望遠鏡の保管とメンテナンスについて

どちらの望遠鏡も全長1メートルを超えます。部屋の中に置くと存在感あります。工夫して保管してください。
光軸調整は必要ありません。万が一狂った場合はメーカーに出すしかないでしょう。経年変化についてはレンズにカビをはやさないようにするくらいです。
●保管や調整に手間がかからないのが屈折望遠鏡のいいところ!
土星、月、惑星がどんなふうに見えるかについて
両機種とも見え味に大きな差はありませんが、並べて比較すればF値の大きいアトラス80が理論上は有利になります。大差はありません。どちらもよく見えます。
どちらの望遠鏡でもこんな感じで見ることができるだろう内容を文章にしました。このぐらいの性能は持っている望遠鏡です。
土星の環の見え方について

画像のように大きく見えるわけではありませんがいつでも見えますよ。土星の傾きが大きくなれば環にあるカッシーニの空隙と呼ばれるスリットも見えます。
倍率は最高倍率にしてください。そのほうが見やすいです。日周運動が気になりますが微動装置で追いかけて大気の状態が良くなるのを気長に待ちましょう。
宇宙空間にリングを持って浮かぶ土星をしっかり見ることができます。まことに不思議な光景です。画像で見えるような本体にある薄いグラデーションもわかります。
月面のクレーターは凄くハッキリ見えます!

最低倍率でもクレーターやクレーターから放射状に延びる衝突跡などよくわかります。最高倍率にすると視野イッパイに月面の世界です。
クレーターは鋭く抉られたような陰影の世界です。平坦な海と呼ばれるところにも小さなクレーターがたくさん見えます。海には皺が依っているようなところもあり地上では考えられない景色です。
画像よりももっとハッキリと見えます!
●月齢によって見えるところが変わるのが楽しいです!
木星の縞模様は良く見えます!

木星はかなり大きく見える惑星です。100倍以上で見ると縞模様がかなりはっきりわかります。最低でも2本以上、眼視能力が上がればそれ以上の本数が見えます。
さらにこの帯状の縞がぐにゃぐにゃとうねっている様子もわかるはずです。大赤斑と呼ばれる赤っぽい斑点は条件次第ではありますが存在するのでぜひ見つけてください。
ガリレオ衛生に関しては低倍率で見ると木星を周回しているところを観測できます。見ごたえのある惑星です。
●木星は100倍あれば表面観察できますよ!
火星は2年に一度の接近時が観測チャンス!
次回の接近は2027年2月です。接近してもそんなに大きく見える惑星ではありません。それでも表面が黒ずんで見えるところはわかります。
極冠と呼ばれる部分は白くひかり赤い本体とのコントラストでよくわかります。
DSO(銀河、星雲、星団)はどう見える?

オリオン星雲はけっこう見えます。アンドロメダ銀河も大丈夫。ヘラクレス座M13といて座M22の球状星団も見えます。亜鈴星雲M27とリング星雲M57も見えます。
ほかにもメシエ天体で見えるものはたくさんあると思いますが光害地では厳しいです。人工の光がない山間地に行けば見えますが存在を確認できるだけと思ってください。見え方は2機種とも変わりません。
●DSO(銀河、星雲、星団)は手動では導入することが至難です。初めての方だと視野のど真ん中にあっても気づかないことがあります。それを見分けられるようになることが楽しいっちゃ楽しいのですが・・・
ポルタII A80Mfとアトラス80を比較する
ビクセンのポルタⅡは大ヒットした望遠鏡ではありますが製造は中国です。アトラス80は国内製造なので安心感はあります。しかしポルタⅡの長い実績が持つ信頼性はアトラスに劣るものではないと思います。

光学性能はほとんど変わらないとして架台についてはポルタに発展性があります。アリガタを持つ鏡筒であれば取り付け可能です。
しかし鏡筒の交換は現実的ではありません。変えるとしたら架台は赤道儀でも経緯台でも自動導入にするべきです。
鏡筒の互換性を判断基準にすることの意味はないと思います。しかもポルタ経緯台の重量はかなりあります。
アトラス80の勝利!【当ブログの勝手な判定】
微動ハンドルと重量で考えました。総合的に考えてアトラス80のほうが使い勝手はよいでしょう。
●現状この2機種に絞られます。ふたつの望遠鏡のいちばん大きな問題点は図体です。とにかく邪魔になります。
屈折望遠鏡の弱点・色収差について【アクロマート式屈折望遠鏡】
月や惑星の観測であれば初心者用のF値が大きめのアクロマート屈折望遠鏡【F10以上】がいちばんおすすめです。【F値が小さいと土星の環は分離しずらくなります】

画像はWikipediaから引用しました。
光はレンズを通ると波長によって屈折率が違うため焦点が異なり色収差が起こります。
アクロマート式は色収差を補正する方法です。屈折率の違う対物レンズ(ガラス)を2枚使って焦点を揃えます。

F値は焦点距離÷口径です。F値が大きくなると望遠鏡が長くなります
焦点距離100センチ÷口径10センチ=F値10
F15以上にすると色収差は激減します。昭和の望遠鏡はF15が普通でした。最近はF10以下で全長を短くして取り扱いを優先しています。色収差にこだわる望遠鏡はコストがあがりますがアポクロマート補正【レンズの材質とレンズの枚数で高度の補正】します。それでも完全に色収差を取り除いているわけではありません。
- 補正をしても色収差は残ります。これは必ず出ます。明るい天体を見るとかなり不快な存在です。
- 屈折式はF値も大きく鏡筒が長くなりDSO(銀河、星雲、星団)は少し苦手。
●色収差がひどいと像が滲んでシャープに見えません。F10以上の屈折望遠鏡の色収差は眼視観測であればほとんど気にならないレベルになっています。F5の屈折望遠鏡で土星を見ると見事な色収差が出ます。それでも環があることはわかります。
ポルタⅡとアトラス80のF値
ポルタⅡはF11.4、アトラス80はF12.5と長めの設定になっています。これは見え味を意識した設定です。
現在は多くのアクロマート屈折でF10までにすることが多くなりました。鏡筒を短くして取り回しをよくするためです。
●ポルタとアトラスはちょっと大きいですがシャープな見え味です。色収差は気になりだすとかなり気になります。!
アクロマート屈折望遠鏡でも電子観望はできますが

色収差は眼視のときより電子観望や天体写真などで大きく影響します。補正がされていない青や紫の波長が画面の全面に強く出てきます。
しかし写らないというわけではありません。癖のある発色と全体的にシャープさにかける見え方にはなります。

暗い天体を電子観望するときは小さいF値か長い露出時間が必要です!
紹介した2機種についてはF値が大きい関係上、暗いDSO(銀河、星雲、星団)を苦手とします。オリオン星雲やアンドロメダ銀河のように明るいものは観測可能です。ただし決して得意ではありません。
明るい月、木星、土星、火星は楽しめますが電子観望でパソコン画面に映し出されるライブ画像はノイズのため品質が良くないです。
●電子観望ではライブスタックが使えないとノイズだらけの画面です。手動の経緯台ではライブスタックは使えません!
天体望遠鏡でスマホを使う

最近は天体写真をスマホで撮影したいと考えている方もたくさんいます。オプションでスマホ撮影キットを購入すれば撮影はできます。キットなしでも撮れるのですがスマホを接眼部に固定できないとけっこう難しいです。
まとめ【自分の目で月や土星を楽しむ望遠鏡の頂点!】
屈折望遠鏡はとても使いやすい望遠鏡です。天体の導入も容易で面倒な調整やメンテナンスもありません。
紹介した2機種は見え味もよく光学性能的にも個人が所有する入門機としては決定版だと思います。これ以上を求めると上級機になります。
●どちらも図体がデカイと悪口言ってますがそれ以上にカッコいいですよ!



いろんなメーカーがあります、けっこう難しいですが土星の環ぐらいは撮れますよ。チャレンジしてください!